庭に「木陰」をデザインする・・・これからの時代の庭に必要な考え方
「庭のデザイン」というと何が思い浮かぶでしょうか。ウッドデッキやタイルテラスの形やレイアウト。目隠しフェンスの高さや場所。素材、色。シンボルツリーの樹種は何にするか。などなど…。いわゆる「ガーデンデザイン」「エクステリアデザイン」の要素は、心地よい外空間づくりにとって、もちろん大切です。でも、これからの時代に庭に最も必要とされるのは、庭に「木陰」をデザインする ことではないか、と思うのです。
ウッドデッキやテラスなど、ガーデンリビング空間に「日影」をつくるのであれば、シェードやパーゴラなどでもいいと思います。でも木陰は、日影よりも、実は涼しい。葉から水を蒸発させる「蒸散」作用で、葉の周りの熱を奪い(気化熱を奪うといいます)、温度を下げています。体感温度は囲まれた空間の放射熱(例:壁などから反射する熱など)が大きく影響します。枝葉がキャノピー(天蓋)状に茂った上部。木陰により直射日光を避けた下部。そしてまわりとの温度差により微風が吹く。これが、木かげによる「微気候改善」といわれる効果です。その微気候改善をもたらす空間デザインを「微気候デザイン」と呼びます。
もっとわかりやすく言うと「木かげデザイン」になるわけです。
上の2枚の写真は、植込み直後と、その3年後の様子です。「木陰デザイン」では、キャノピーをつくるための樹種の特性、そして植生(生育条件)と枝葉の伸長=成長を考えて、植え位置や樹木の組み合わせを考えます。通常、建物やエクステリア構造物はその場所から動きません。樹木は成長して枝葉を広げる=動きます。どの様に枝葉を伸ばすか、剪定で生育コントロールし美しく保ちながら、キャノピーとしての機能を保つか。デザインといいながら、植物の特性に対する知識やメンテナンス技術も必要になります。時間軸を含めたデザインなのです。
樹木は、建物やエクステリアを引きたてる要素としての側面もあります。しかし、もっと樹木の役割として重要なことがあります。それが、外環境をつくること=木陰デザインだと思うのです。そして、実は「木陰デザイン」が景観としても美しい景色を生み出します。
そして、環境のために
「木陰デザイン」で庭をつくることは、環境改善に貢献することになります。地域や街、日本や世界、地球全体から見れば、ほんのささやかな樹木、木陰です。でもその1本1本のつながり、木陰の連続が、環境を変えていくのだと思います。
その可能性について、チューリッヒ工科大学のトーマス・クロウサー教授らが研究結果を公表しています。世界中にある「植林可能なスペースが空いているが、現在木々が植えられていない空き地」について分析したところ、世界中にあるすべての空き地は1兆2000億本の木を植えられるだけのスペースに相当し、仮に全ての空き地に植林した場合、「植えられた木は世界中で人為的に排出される二酸化炭素(CO2)などの炭素」を上回る量の炭素を毎年吸収してくれることが判明しました。
●参照リンク
木は生長するにつれて多くの二酸化炭素を吸収するようになるため、二酸化炭素などの温室効果ガスによって引き起こされる地球温暖化に対し、植林は一つの対抗策であるとされています。上記チューリッヒ工科大学の研究者らは、「気候変動に対処するもっとも強力で安価な方法だ」と主張しています。
庭に木を植え、「木陰デザイン」することで、次の世代にすこしでも良い環境を残したい・・・。ぜひ「木陰デザイン」でモリニワを、あなたの庭に。